白い線

雪が降った。

とても寒い夜だった。風が吹き、木々は揺れていた。
空を舞う白い埃のようなかたまりが、傘を持つ右手の甲に冷たい。

夜の街、好きな音楽たずさえてわけもなくスキップする。
蛍光色の街頭や色あせた街路樹を背景に、ひとり嬉々として暗闇に身を投げ出す。

高層マンションの光、薄汚れたアスファルト、泥に汚れた車のバンパー。
妙に白けていて、どれもまるで今の気分に合わない。

それでも、雪だった。

***

朝起きて太陽は、雲一つない青空に輝いていた。
突き刺す陽光が、白い地面に照り返りまぶしかった。

近所の公園では子どもたちがはしゃいでいた。雪だ、と。

確かにそうだ、と僕は思う。雪だ。
それは非日常である。誰かにとっては。
馬鹿馬鹿しいと思うだろう。

それに、僕は雪の何たるかを知らない。

 

遠く異国の地から送られてきた写真には、真っ白な空と真っ白な雪原が写っていて、それらを水平線が切り裂いていた。

公園で拾った雪がとても冷たかった。