2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

深夜・版画・自己肯定

今日も夜が更けた。部屋を出て街へ行けば、信号と街灯が夜道を照らし、ひっそりとした空間が広がっているはずだ。 夜が更けたのは版画を彫っていたからだ。版画を彫っていたのは本を読む作業に集中できなかったからだ。本を読む作業に集中できなかったのはス…

そぼろ雪

雪が降ると決まって思い出す景色は、とくにない。 さいきん過ごしているあたりではめずらしく、今年はよく雪が降る。寒いけれど、やはりうれしくなって散歩のついでに近くのスーパーまで歩いた。 天気は曇り。日は見えないが重い感じはしない。道端にはいた…

お寿司の記憶

このごろ、お寿司を握った。 友人とスーパーマーケットを歩いていたとき、刺身が目に入った。横から見たクジラのシルエットをイラストにしたような形の切り身だった。あるいはペニー・ファージングのようなバランスとも言える。そんな形なので、おそらく扱い…

汲み取れているだろうか

(周りくどいある場面にて…) 目の前に誰かいるとき、少なくともその人のことを理解しようとするために、その人についてとらえようと努力する場合が、なくはないだろう。目の前の誰かというのは、まず文字通り眼前の誰かということもあるだろうし、あるいは…

そしてまた自分はまわりくどく、夜は更けていく

その人がいない場面で、その人との関わりによっていかに自分が嫌な気持ちになったりいかに不快と感じたりしたかを、誰か他の人に話すことは、少なくないかもしれない。誤解をおそれずに言えば、目の前にいない人の悪口を言うことである。 こういうことをした…

白い線

雪が降った。 とても寒い夜だった。風が吹き、木々は揺れていた。空を舞う白い埃のようなかたまりが、傘を持つ右手の甲に冷たい。 夜の街、好きな音楽たずさえてわけもなくスキップする。蛍光色の街頭や色あせた街路樹を背景に、ひとり嬉々として暗闇に身を…