2018-01-01から1年間の記事一覧

自分についての物語

たまに読み返す本に、高井有一の『谷間の道』がある。特にその中の一節の「遠い明り」のことを、僕は折に触れては思い出す。 なぜか?それは多分、自分のことについてそこに少しだけ書かれている気がするから。 でもそれって良いことなんだろうか?と思った…

匂いの引き出し

「きんもくせいの匂いはお祭りの季節!」 そういう事について高校の時、クラスメイトが楽し気に言葉にした。 秋が近づく9月の終り頃だったと思う。夏の気配は過ぎ去り、蝉の鳴く声もいつの間にか聞こえなくなっていた。教室では窓から入るそよ風が心地よく、…

遅刻

高校生だったころ、よく学校に遅刻していた。 通学路は次の通りだ。まず自宅から最寄り駅まで自転車でおよそ10分。下り電車に揺られること約20分。電車を降りたら、駅から学校まで歩いてだいたい10分。合計40分。教室には8時20分までに着かなくてはいけなか…

クリームソーダが泡を立て 交わした言葉が浮かんでは消えていく 中身は空っぽの 透明なブドウ 甘くて酸っぱく、ときおり渋い 降り出した雨が斜めに線を引き 待ち針のように果実を突き刺す 穴から傷みが広がって 会話のかたわらに腐り落ちた 皮を拾って縫い繕…

つかめぬままに

ある街のあるデイサービスに、1年半くらい顔を出している。多い時には週に2,3回程度で、少ない時は月に1回訪ねるかどうかという頻度だ。自身の予定や都合に合わせて行っている。 時間は、早い日では朝9時ころから行くこともあるが、だいたい午後の日が…

ネガティブフィルム

写ルンですを現像した。半年前に旅行用に買ったものの旅先では使い切らず、以来気が向いたときに撮っていた。 昼過ぎ、空はどんよりと曇っている。駅前の小さなカメラ屋さんに足を運ぶ。古びたドアを押し店に入ると、子どもを連れた女性がタッチパネルを操作…

今日も

ひとりっぽいな~と感じる。 もちろんSNSで誰かと繋がっているとか、同級生や家族と連絡を取れるとか、 そういうのはあるけれど。 日々を過ごすいろいろな場面で感じる。 人生の航路の中で漕ぎ出す船はいつもひとつとか、そういうものでもない。 空の青い部…

今日もハトが飛んでいた

今日もハトが飛んでいた なぜ? あの塀の向こうに 何があるかを僕は知ってる梅雨になれば紫陽花が咲くあの場所を 僕は知っている駅へ行き切符を買って 改札を過ぎホームへ行けば時間通り電車が来ることを僕は知っている 部屋から見る広い枠に収まる空を外に…

読書用のブログ

読書用のブログを作りました。 → http://swtsgym.hatenadiary.com いや、このブログも読書メモちゃうんかいというツッコミはあると思いますが、まあこっち(この記事が載っている方)は趣味というか、肩の力抜いて書きたい方ということで…。 読書用のブログは…

Home

遠くに明かりが見えた 駅のホームから 商店街の人気のない暗さ 炭酸ジュース、思い切り投げ込む 誰かに届く 返事のないボトル 手紙を入れたわけでもなく 海に浮かぶ瓶でもない いつかはどこかに行き果てる

Airplane

僕は眺めていた窓から見える星のカタログを あの星は言うだろう空飛ぶ点滅がよりどりみどりだと 星のようには結ばない街をつなぐ線夜の帳が星を描く

茶の相談室①

N(悩みの頭文字をとってN)が悩みを打ち明けに来た。 ………… N「こんにちは」 相談員(以下、相)「どうも」 N「突然ですが、悩んでいるんです」相「そりゃあ悩むだろうね。具体的に、何を悩んでいるのかな?」 N「悩みについて、悩んでいるんです」相「なんだっ…

「具体的に」生きる/坂口恭平『TOKYO 0円ハウス 0円生活』

この本は、“路上生活”をいとなんでいる「鈴木さん」とその相方である「みっちゃん」の二人が、“0円ハウス”に住みながら過ごす日常を巧みに描写したものである。 坂口恭平は建築家/作家であるのだが、鈴木さんの“0円ハウス生活”について建築やものづくりの観…

私と雑巾

最近よく、目の前の課題を終えたあとのことを想像する。 これを終えたら何をしようか。 何をしようかと言うのは何を食べようかとかどこへ出かけようかとかと言うよりは、何か自分の進路に関わるような何かである。 自分は何の人なのか? 文字の人なのか、絵…