今日もハトが飛んでいた

今日もハトが飛んでいた

なぜ?


あの塀の向こうに 何があるかを僕は知ってる
梅雨になれば紫陽花が咲くあの場所を 僕は知っている
駅へ行き切符を買って 改札を過ぎホームへ行けば
時間通り電車が来ることを僕は知っている


部屋から見る広い枠に収まる空を
外に出ればもっと四角く感じることができることも
僕は知っている
自分でいれたコーヒーは相変わらず濁り
あの喫茶店へ行けば苦い一杯が飲めることも
僕はすでに知っている


誰に知られることもない この部屋の片隅で
このつまらない一節を書くそのかたわらで
今日も雨は降りその晴れ間を見逃さずハトは飛ぶ
なぜ?